Tauchi Sakura*Art

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン出身。絵画・イラストレーションに関するブログ。前頭葉に幸あれ。

十字架の記憶

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あまりメインにはおきたくない点描だけど点描している。

最近、病気になった時のことをよく思い出す。不眠と高熱にともなう幻聴と幻覚。体が火に包まれるイメージ、空から星が降ってきてお腹に刺さるイメージ、耳の中で爆発するガラスの割れる音と人の叫び声。暗闇に浮かび上がる吊られた人影。あまりの恐怖に前後不覚になって他人によくわからない連絡をしてしまったりだとか。
そしてそれが収まった今、何事もなかったかのように振る舞っているけど、ふとすると苦しく、言語化したくなってしまう。
ここまでは実際に存在しないものが見えていたのは間違いないけど、病院の窓を開けた時にブラインドから漏れた朝の光が壁にうつって十字の形に見えた。あれも幻覚だったのだろうか。もともと信仰心なんかないのに、なんだか救いのような気がして、私は光に向かって必死に手を合わせてしまっていた。携帯も没収されていたし、病室に一人きりだったし、理解されないだろうから今まで誰にも言わなかった。私の頭の中にしかあの十字架はない。

最後のその症状から一年経った。
疲れたら眠れるようになった。

働いて、また絵を描いている。自分に対する理解が一度根底から崩れてしまったこと、いつまで時間があるのかなあとか、これからどれぐらい発表の機会があるだろうかとか、その他消えないしんどさを言葉で吐き出しそうになってしまうし、いい形で作品に結実したいとまでは言えない。
ウィリアム·ブレイクは幻視を作品にできるが、それは天才だからだ。

ただもし万一神様がいるとしたら、なんとなく信じたいような気がしている。最近。わかんない。やっぱいないかもしれないけど。