Tauchi Sakura*Art

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン出身。絵画・イラストレーションに関するブログ。前頭葉に幸あれ。

十字架の記憶

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あまりメインにはおきたくない点描だけど点描している。

最近、病気になった時のことをよく思い出す。不眠と高熱にともなう幻聴と幻覚。体が火に包まれるイメージ、空から星が降ってきてお腹に刺さるイメージ、耳の中で爆発するガラスの割れる音と人の叫び声。暗闇に浮かび上がる吊られた人影。あまりの恐怖に前後不覚になって他人によくわからない連絡をしてしまったりだとか。
そしてそれが収まった今、何事もなかったかのように振る舞っているけど、ふとすると苦しく、言語化したくなってしまう。
ここまでは実際に存在しないものが見えていたのは間違いないけど、病院の窓を開けた時にブラインドから漏れた朝の光が壁にうつって十字の形に見えた。あれも幻覚だったのだろうか。もともと信仰心なんかないのに、なんだか救いのような気がして、私は光に向かって必死に手を合わせてしまっていた。携帯も没収されていたし、病室に一人きりだったし、理解されないだろうから今まで誰にも言わなかった。私の頭の中にしかあの十字架はない。

最後のその症状から一年経った。
疲れたら眠れるようになった。

働いて、また絵を描いている。自分に対する理解が一度根底から崩れてしまったこと、いつまで時間があるのかなあとか、これからどれぐらい発表の機会があるだろうかとか、その他消えないしんどさを言葉で吐き出しそうになってしまうし、いい形で作品に結実したいとまでは言えない。
ウィリアム·ブレイクは幻視を作品にできるが、それは天才だからだ。

ただもし万一神様がいるとしたら、なんとなく信じたいような気がしている。最近。わかんない。やっぱいないかもしれないけど。

形をとるということ/デッサン

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17~19歳当時美術予備校で石膏や静物デッサンをしていたこと、美術予備校で講師をしていたこともだいぶ過去のことだが、貴重な時間だったと思う。
昔のことであまり写真を残してないので、帰省時暇な時撮った数少ない写メ
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あと、当時のクロッキー帳メモ
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ネット上で確認できる石膏はこのへんかな
https://matsubi.com/new-sakuhin03.htm


先日、メッセージで色々と主義主張をぶつけてきた浪人生の習作を見て、思ったことがある。独自の制作スタイルを語り、人に賛同や庇護を求め、それが受け入れられなかったら否定する前に、すべきことがあるんじゃないか。それは対象物の形を真剣に追いかけることだ。
石膏でも静物でも、その形、その比率になるまでに数えきれない芸術家、職人、デザイナーなど制作者の試行錯誤がある。人物なら天然自然の、1ミリもずれてはいけない造形がある。デッサンとして描く場合、それに無頓着でいてはいけないし、形と比率に込められた作り手の「思い」をくみ取り、思い込みを捨ててまず誠実に再現すべきだと思う。植木鉢一つとっても。まずきちんとモチーフと向き合い、見る·観察する。そういった姿勢がすべてに繋がってくるはずだし、その基礎を抜かして先の表現はないと思う。
とにかく目で見て足りないならデスケール使えばいいし、測り棒使えばいい。

勉強できる時間は何度とない大事な時だし、謙虚に対象物と向き合える経験は楽しいはず。目を曇らせているとすぐ過ぎ去ってしまう。それを無視するのは損でしかないよなあと思う。
土台のない発展はない。
受験シーズンも3月に入って合否結果も出ただろうけど、そんなことを考えた。

手元を離れたもの

12月、アートコンプレックスセンターでの大細密展も終わりました。今回お引き渡しが決まったもの
「フライングブレイン·フラスコ」
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「ダイヤモンドの中の狼と女」
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「うめ」
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「うめ」に関してはかなりお気にいってくださったようで、飾った写真もいただけました!
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以前購入していただいた「さくら」と並べて。
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「うめ」は高円寺で飲んでは色んな鬱々した話やわくわくした話を共有して親しくしていた元友人がモデルです。真夜中の公園でブランコ乗りながら大森靖子歌ったりとか、ガード下の四文屋の屋台で飲みながら語り合ってそのまま私も高円寺から下りに乗れなくて幾度となく泊まったりとか。
上手く寝れないんだよねーと言った私に彼女が服用していた催眠剤をちょっとだけくれて、二人で飲んで並んで寝たけどやっぱり効かなかったりだとか。
その当時仕事もそれ以外もお互いに不安定で、でも、もしもその日の第一声が「死にたいなー」であっても笑って話すのが当たり前の関係は結構良かったです。あと、四文屋のモツかけごはんは超うまい。
一度腕にいっぱい作った傷を見せられた時だけはどう反応していいか分からなかったけど、色々あっても、包帯を取って花を咲かせている姿を描きたくて下描きを始めました。結果、だいぶ自由にメタモルフォーズしてくれたと思う。

モデルになった子には最近会ってないけど「うめ」を気に入ってくれる方がいてなんとなく供養できた気持ち。

フランケンシュタインの誘惑新シリーズ2020

レギュラーでイラストを描かせていただいてる「フランケンシュタインの誘惑」、今年10月から新シリーズが始まりました。自分としてはダブルワークの生活の中どれだけ毎回の描画をしっかりやれるか、スポーツのような作業日程ではありますが、がんばらねば…と12月放映分の打ち合わせを終えて思っています。
コロナの影響か、再現ドラマ部分のイラストが今までに増して増えてるみたい。
過去描いたものの一部
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地震予知回の原画のうちの一枚。これ大変だったけどこの時は謎のアドレナリンが出て元気でした。
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毎月最終木曜日の夜9時からNHK BSで放映されます。今月のテーマはアスペルガーナチスが台頭し優生学に基づいた政策が推し進められるなか、発達障害をもつ子供たちを研究した科学者のお話。ぜひご視聴のほどよろしくお願い致します。ナビゲーター、主題歌は吉川晃司さん。
https://www.nhk.jp/p/ts/11Q1LRN1R3/