Tauchi Sakura*Art

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン出身。絵画・イラストレーションに関するブログ。前頭葉に幸あれ。

神保町

大学4年。一人で神保町によくいた。ディスクユニオンとジャニスでCDを手にいれ、三省堂と書線グランデと古本屋を周り、数百円の本を買う。穂高、ミロ、古瀬戸に座り本と持ってきたイラストボードを同時に眺め、煙草を吸って絵を描く。アパートでは絵を描けず、まず出ていってそういうところに座らなければ絵を描けないぐらい寂しかったのだと思う。よって私は卒制の絵30枚の構想を全部神保町の喫茶店でやっていた。明大の学生が楽しそうに喋っているのが耳に入ってくる。
穂高では窓から線路と川を眺めていた。人によっては何か考えているように見えたに違いないが、何を考えていたのかは全く思い出せない。とにかく何も考えずとも川はいつもとても美しかった。あの頃買った本は大体売ったし、ラテン語の辞書も大して役に立たなかった。そのうち真っ暗になってきて、駅前のプラザでドラッグコスメを見て、マスカラとアイシャドウを塗り直し、精いっぱい背筋を伸ばして電車に乗る。背筋を伸ばすことにきっとあの頃気力の8割を使っていただろう。

あんまりにも濃縮された一人がただ在る。のちに彼氏や友達とたまに来ることはあっても、私にとって神保町は基本的にそういう街だった。

で、そんな神保町で、穂高や古瀬戸と並んで好きだったものの一つがすずらん通りの文房堂です。
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